高齢者財産管理の新手法「信託制度」その2 「民事信託 ( 家族信託 )」を使ってみましょう

高齢者財産管理の新手法「信託制度」その2 「民事信託」について

民事信託(家族信託)で財産を守り家族の生活もサポートできます

はじめに

私は前回のブログ 高齢者財産管理の新手法 信託制度その1「後見制度支援信託」において初めて信託制度のことに触れましたが、今回も引き続き信託制度の中で高齢者の財産管理に非常に役に立つ別の制度のことについてご説明したいと思います 

今回お知らせするのは「民事信託 (家族信託) 」と呼ばれる制度についてです。  文字通り家族による信託制度です 。

新しい信託法の下でここ数年、家族や親族に財産を託す民事信託(家族信託)制度
への注目度が高まってきています。

 
認知症や障害のある家族を確実に守り、相続対策 ができるなど利点が多いため、
利用する家族が年を追って増えているようです。

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目次

高齢者の財産を守る 遺言成年後見民事信託 その違いは何?

私たちファイナンシャルプランナーは、高齢期の財産管理や遺産相続に不安を抱く多くの高齢の親とその家族(子供達)から相談を受けることが多いわけですが、高齢者の財産管理の方法には、以前にも別の記事で申し上げた通り「成年後見制度というものがあり、また遺産相続の面においては従来より「遺言」という方法があります。

成年後見制度について書かれた記事はこちらです。

「成年後見制度」認知能力・判断能力の衰えてきた高齢者の財産を守るという
目的がある
わけですが、あくまで本人の財産を守ることが目的であって、家族の
生活のサポートや相続対策のために本人の財産を使うことは原則できません。

また後見が開始されると財産は家庭裁判所の監督下に置かれ、日常の金銭の使い道の報告義務があるなど、家族にとっては必ずしも使い勝手がいいとはいえないのです。

「成年後見制度」では判断能力が低下してから亡くなるまでの期間だけは必ず後見人が財産を守ってくれますが、判断能力が衰える前のまだ健常な状態の時や死亡した後については対象外となります。

一方「遺言」(遺言書)本人の死後、遺産をスムーズに引き継ぐことで家族の生活を守ることができるというメリットがありますが、その一方で「遺言」は契約ではないため、遺言者が亡くなる直前に撤回したり書き換えたりする可能性があり、また遺言者の死後、相続人全員が同意すれば遺言が実行されないという可能性もまたあるため、相続人にとっては不確かな面があります。

民事信託 (家族信託) の特徴

そこで私たちがこのようなときに極めて有効な制度としてご紹介したいのが、
「成年後見」でもなく「遺言」でもない、家族や親族を受託者とする信託制度で「民事信託」または「家族信託」と呼ばれる制度です。

これは2006年の信託法の改正により広く利用できるようになりました。この新信託法は2007年9月30日から施行されています 。

「民事信託 (家族信託)」は高齢者の判断能力がまだ十分にあるときから、信頼できる家族に財産管理を任せることができる信託制度です。
 

また本人が亡くなった後の相続やその後の財産管理についても信託契約で定めて
おく
ことができます。

いわば「民事信託 (家族信託) 」長期的に本人の高齢期も死後も、財産管理と
家族への財産の承継・相続を切れ目なくしっかりサポートすることのできる仕組み
なのです。 

つまり「民事信託」は、財産を守る、活用する、遺す、をワンストップで行うことができるのです。

認知症の事前対策に極めて有効な民事信託

認知症対策としても「民事信託 (家族信託) 」は極めて有効な方法です。

「民事信託」は不動産や金銭などの資産を信頼できる家族などに託し、その管理や処分を任せることができます。

「民事信託」の主なメリットは、家族・親族に管理を託すため、高額な報酬は発生しないこと、遺言や後見では実現できない柔軟な財産管理や処分が実現できることなどです。

また「民事信託」は有価証券の売買なども取り決めの範囲内で自由に取引することができます。
つまり成年後見制度よりも自由度が高く、本人の思いに即した資産継承の実現が
可能となる
わけです。

認知症の事前対策として「民事信託」を利用することで、例えば父母が認知症に
なってしまったときに父母が持つ不動産を売りたくても売れない、リフォーム
したくてもできない、といった事態を防ぐことができるのです。 

成年後見制度の場合はあくまでも判断能力が衰えた高齢者本人の財産を守るのが
目的
で、リスクを伴うような資産運用などはできません。

しかし「民事信託」ならば契約により資産運用することも可能なのです。
つまり後見制度よりもかなり自由が利くということなのです。

また成年後見制度の場合には、やむを得ず自宅を売却する時などは家庭裁判所の
許可
を得なければなりませんが、「民事信託 (家族信託) 」なら家庭裁判所の
許可は必要ありません。

また司法書士や弁護士などの法律専門職後見人になった場合には相当額の高い
報酬
が必要となりますが、「民事信託」なら家族(親族) が後見人ですから当然
後見人への報酬も必要ありません 。


弁護士や司法書士のような法律専門職は後見人にはなれますが、業務として信託
制度の受託者となることは法律で禁じられています。

また民事信託ではチェック役として受益者の権利を代理行使する「受益者代理人」なども任意で設定することが可能です。

「民事信託」の契約は高齢者 (親) の判断能力があるうちにしかできません。
ですから早めに家族と話し合って信託契約を結んでおくことが必要です。

親が家族と信託契約を取り交わす それはどんなときか?

信託は、財産を所有する人 (委託者) が、信頼できる誰か (受託者) に財産の名義を移転して管理してもらう制度です。
信託というとすぐに信託銀行の業務を思い浮かべることも多いと思いますが、信託業の免許がなくてもだれでも受託者になることは可能です。
これが民事信託」です。

しかし「民事信託」の最大の課題は、受託者をどのようにして選ぶかということです。

ここで「民事信託」の一つの例として、親が子供たち家族との間で信託契約
交わす事例
をひとつ見てみましょう。 

例えば現在は自分で管理している賃貸アパートを所有している親が、元気なうちにその名義を子供に移します。
アパートの借り主を募集したり物件を修繕したりといった管理も子供に託します。
こういった内容の信託契約を家族 (子供) と取り交わしておくのです。

そうしておけば、もしも将来判断能力が衰えて自分が認知症などになったとしても、賃貸アパートは子供が所有して自由な判断で管理を続けることができます。

信託契約では賃貸に伴う収益を受け取る人 (受益者) を決めておくことができるので、親を受益者にしておけば賃貸アパートの家賃収入による収益を親の生活費に
充てることができます。

これがよく民事信託信託契約を取り交わす一つの事例です。

 

ただし、信託契約を取り交わすとは言っても、今まで信託制度のことは何ひとつ
知らなかった素人同然の人たちが、いきなり専門的な契約を取り交わすのはやはり難しすぎてほとんど不可能かと思われますので、信託契約の作成をするには、
やはり弁護士や司法書士などの法律の専門家に依頼する必要があるようです。 

信託契約の作成の報酬は信託財産額の1%を目安とするケースが多いようです。



また、家族 (子供たち) といえども、不正や財産の流用が起こらないようにしっかりと見極める必要があります。なぜなら家族による不正や財産の横領事件が最近激増しているからです。
信じて託せる関係でなければ、たとえ家族や親族であっても信託契約をすべきではないと考えます。 

また「民事信託 (家族信託) 」では一人暮らしで頼れる身内もいないなど、信頼して財産を託せる人がいない場合には契約することは難しいと思われます。

ただ財産を託す相手は家族だけではなく友人や知人でも構いません。

知人の場合は厳密には「家族信託」という呼び方は相応しくはありませんが、信頼できる人かどうかということが重要なのでこれも一つの「民事信託」と考えられます。


もっと民事信託を知ってほしい

「民事信託 (家族信託) 」まだ世の中の認知度が低いため、ほとんどの高齢者の
方は信託の制度自体を知りません。

しかし認知症と診断された後では「民事信託」を利用することができないため、
元気なうちからこの制度を知ってもらって検討するのが最良の方法だと思われます。

高齢者世代が信託制度への認知度が低く、「民事信託」自体を知らなくても、その子供の世代である、あなたにはきっとご理解いただけると思います。

どうか親御さんに「民事信託」を勧めてみてください。

「民事信託 (家族信託) 」のまとめ

民事信託目的の範囲内で受託者の裁量により信託財産の自由な管理運用や処分
ができます。

民事信託委託者本人が亡くなっても相続手続きなしにスムーズな資産の承継が
可能となります。

民事信託高齢期の財産管理と遺産相続については遺言書や任意後見など他の様々な制度を組み合わせることにより隙間なく本人と家族を守ることができます。

また民事信託の注意点として、民事信託という制度受託者の責任や負担が非常に重いので十分に納得した上で引き受けてもらうことが重要となります。

※参考文献 「 Journal of  financial planning」No. December 2017 より記事の一部を参考とさせていただきました

高齢者財産管理の新手法「信託制度」その2 「民事信託」について 終わり

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