成年後見制度を巡る問題 1 高齢者の財産を不正流用する後見人が激増している!!

成年後見制度を巡る問題 1 高齢者の財産を不正流用する後見人が激増している!!


はじめに

今回は成年後見制度のいくつかの問題点について、ファイナンシャルプランナーでもある筆者が現況を深く掘り下げて問題提起をしてみたいと思います。

第一回目の今回は、成年後見制度の現況制度の仕組みと、更に制度を悪用する者たちの実態についてご紹介したいと思います。

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目次

成年後見制度の現況と分類、仕組みと問題点、そして長所と欠点も!!
すべてご説明致します

成年後見制度の現況

成年後見制度認知症知的障害などで判断能力が不十分な成人に代わり、選ばれ

後見人財産管理や生活支援(身上監護)を行う制度です。

認知症知的障害で十分な判断能力を有しない成人に代わり、親族や法律専門職

後見人財産管理などを行って、悪質商法や詐欺商法の被害などから高齢者や

社会的弱者らを守る、極めて意義のある制度です。

認知症の高齢者が増加する中で、その権利や財産を守るための成年後見制度の重要性は年を追うごとに増してきています。
ですからより一層利用者の身になった運用が求められています。

成年後見制度の申し立ては昨年2017には過去最多の3万5737件となりました。 毎年わずかずつではありますが、この制度が社会に認知されつつあるということを証明していると言えるでしょう。
しかし申立件数が最多とはいえ、制度の利用者は約21万人にとどまっています。

認知症高齢者の数が推計で500万人を上回っておりますので、この21万人という数字は極めて少ない数字です。

これは成年後見制度というものがあるのは知ってはいるが、まだ実際に利用する人は少なく、未だに社会に普及しているとは言い難いのではないかと思わせるような数字なのです。

残念なことです。 もっと制度の利用促進を図っていかなければならないと感じています。


「成年後見制度」の分類

「法定後見」「任意後見」の2種類があります

1.法定後見制度の仕組み

まずは「法定後見制度」です。 この制度は、現時点で既に認知症を発症しているなど、判断能力が不十分な状態になってしまっている場合の成年後見制度です。

「法定後見」申立権のある者 (本人・配偶者・4親等内の親族・市町村長など)が家庭裁判所に申し立て、判断能力があるかどうか審議され、今の判断能力の程度に応じて「後見人」・「保佐人」・「補助人」と呼ばれる3種類の成年後見人が選任されるものです。

いずれも本人の意思に基づいて、生活しやすいように支援(身上監護)する義務があり、財産管理や契約などの法的権限が与えられています。

法定後見制度の欠点


法定後見制度
では、すでに認知症などで本人の判断能力がなくなってることを前提に、本人の財産の保護と身上監護が厳格に規定されているのですが、法定後見を申し立てる際に本人の周りに身近な親族がいない場合には、実際に法定後見を申し立てることはなかなか困難な事になります。


例えば本人が居住している街の市町村長も法定後見を申し立てることができますが、これには「福祉を図るために特に必要があると認めるとき」という条件に合う場合に限定されていますので、確実に後見制度による保護を受けられるかどうかというのは分からないのです。

 

2.任意後見制度の仕組み

一方「任意後見制度」(任意後見契約)まだ本人に判断能力があるうちに認知症などで判断能力が不十分になってしまった場合に備えあらかじめ本人が自らの意思で選んだ「任意後見予定者」に自分の生活支援や身上監護または財産の管理に関する事務について代理権を与える「任意後見契約」という契約を締結するものです。

「任意後見予定者」親族でも構いませんが、弁護士や司法書士などの法律専門職に依頼することもあります。

また親族や法律専門職だけではなく、信頼のできる一般人を「市民後見人」と呼んで、任意後見人とすることも選択肢のひとつです。

自治体によっては「市民後見人」任意後見制度の担い手として育成するところも増えてきました。

「任意後見契約」の手続きの仕組み

任意後見契約は意外と手続きが難しく、「任意後見予定者 (市民後見人も含む)」と後見を受けたい人とが公証人が作成した公正証書によって任意後見契約を締結する必要があり、契約締結後は任意後見契約が契約済みであるということを法務局に登記しなければなりません。

その後本人が認知症などにより判断能力がなくなって、任意後見予定者が「これは任意後見を始めることが必要ではないか」と判断した場合に、家庭裁判所に「後見監督人を選任してほしい」と請求することが出来るのです。

このあと家庭裁判所が「任意後見監督人」といわれる、後見監督の専門職を選任すると同時に、任意後見人の後見業務が始まるわけです。


任意後見人 
(市民後見人も含む) は後見監督人監督のもと、本人の不動産や預金などの財産の管理や処分などを行うことになるのです。


つまり任意後見人は常に任意後見監督人の監督下にあるということになります。

任意後見監督人は、任意後見人任意後見契約の内容通り適正に業務を行っているかどうかを監督し、家庭裁判所に報告するのが主な職務です。


任意後見人が任意後見契約の趣旨に反して本人の財産を不正に消費してしまうような事態を防ぐための制度設計になっているわけです。 

原則として任意後見監督人には弁護士や司法書士などの法律専門職である第三者が選任されます。

任意後見のメリットとデメリット

任意後見の場合には本人に判断能力がある状態のうちに任意後見契約を締結しますので、自分の意思で後見の内容を比較的自由に設定しておくことが可能となります。

例えば金銭の管理方法や処分方法、または自分が入居する高齢者施設などをあらかじめ指定しておくことも可能となります。 

しかし任意後見の最大のメリットは何と言っても、後見人になってくれる人をあらかじめ自分の意思で選んでおくことができるということです。


また、任意後見のデメリット
何と言っても、任意後見人には法律上の「取消権」というものがないことです。

任意後見人といっても本人と四六時中生活を共にしているわけではありませんので、本人の判断能力が著しく低下した後に、例えば本人が悪徳訪問販売業者などから不要な高額商品などを購入させられてしまったというような場合でも、任意後見人には「取消権」がないため、商品を返品して購入代金を取り戻すというようなことはできないのです。

対照的にこのような場合法定後見人であれば、本人が勝手に行った行為については「取消権」を行使できるのですが。

成年後見制度の問題点 任意後見制度の悪用を防ぐためにはどうしたらいいのか !?

最近、後見人になったという立場を利用して、悪質な意図を持って犯罪行為をする任意後見人の事例が後を絶ちません。

例えば、まず本人と任意後見契約を結んで安心させた上で、実際には本人の判断能力が低下した後でも家庭裁判所に任意後見監督人選任の請求をせず、既に判断能力が不十分な本人に高額の商品を買わせてみたり、または不必要な投資をさせて損害を与えるなどの被害が数多く報告されているのです。

このようなことを防ぐためには、任意後見人に選ばれた人は、任意後見が始まるまでの間に定期的に本人と電話連絡をするなり、面談を行ったりして本人の健康状態や生活状況を確認する見守り行為も必要になってきます。

この見守りについても別途「見守り契約」を締結する場合もありますが、これも任意後見受任者に悪意があればあまり効果がありません。

ですから任意後見人予定者には信頼できる人物を選任することが最も重要であるといえるのです。

法律専門職による財産の不正流用などの不正行為が後を絶たない!!

最近では後見人に選ばれたにも関わらず 後見が必要な高齢者の財産を勝手に流用
して着服する
など、絶対に見逃すことのできない不正が後を絶ちません。

見が必要な高齢者を喰い物にする、看過できない悪質犯罪が数多く発生しているのです。 

昨年2017に発覚した件数だけで不正事案は294件も発生し、被害総額は約14億4,000万円にも上ります。 

不正のほとんどは親族後見人によるものなのですが、驚くべきことにこのうち弁護士や司法書士などの法律専門職後見人による不正が11件もありました。

法律専門職後見人による不正は法定後見・任意後見にかかわらず増えてきています。

弁護士などの法律専門職であれば一応信頼性は高いはずなのですが、このように最近では不祥事を起こす法律専門職が後を絶ちません。実に情けないことです。

法律専門職後見人による不正が増えたのは、家庭裁判所が専門職の後見人選任を
増やしている影響とみられています。

法律専門職後見人の本当の役割


後見人制度の監督機能を担い、家庭裁判所の担当裁判官の補完をするのが法律専門職後見人の本来の仕事であるはずなのに、肝心の監督役自らが不正を働いてしまっては後見人制度の信頼が大きく揺らぐことになります。

裁判所を管轄する最高裁判所や全国の弁護士会・司法書士会などは再発防止に努めなければならないでしょう。

任意後見業務を取り扱う法律専門職であれば大体 研修が義務付けられ、任意後見に関する知識やスキルを持っているはずです。

それなのにこのような弱い立場の人の財産を着服し横領するなどという卑劣な犯罪行為を犯してしまうのです。

一体どういう理由なんでしょうか?  良識を疑います。

もしもあなたやあなたの周りの人が、どなたか法律専門職の方を任意後見予定者として考えているのであれば、その法律専門職の方からは納得のいくまで後見業務に関して説明を受け、不安や疑問を払拭した上で任意後見契約を結んだほうがよろしいかと思います。

財産管理委任契約にも注意


任意後見契約と同時に、「財産管理委任契約」を締結し、財産の管理を第三者に委任する方法もあります。

この契約の委任内容というのは、財産の管理、預金の引き出しや光熱費などの日常生活費の口座引き落としなど金融機関との取引、年金の受け取り、あるいは不動産の権利書や通帳やカード類などの重要書類の保管、その他税金や医療費の支払いなどが考えられます。

しかしこれらの委任内容では受任者に悪意がある場合には財産を自分の意のままに勝手に処分されてしまう恐れもあります。

ですから決して受任者に任せっきりにせず、財産管理や事務処理に関する報告書や銀行の通帳の写しなどを定期的に提出させるよう求めるようにしたほうが、犯罪を未然に防ぐ意味でもよろしいかと思います。

ここでもやはり信頼できる人物に「財産管理委任契約」の受任者となってもらうことが必要となります 。

もしこの記事をお読みになっているあなたやあなたの周りの方が任意後見契約を考えていらっしゃるのであれば、あなたの最も信頼のできる方に (それは親族とは限りません) 「任意後見人」そして財産管理委託契約の受任者」になっていただけるようお願いしておかれた方がよろしいかと思います。

最後に

成年後見制度を巡っては、後見人が被後見人である高齢者や社会的弱者の生活状況を十分に把握していないなどの問題や、後見人はいったん申し立てると変更するのが難しいといった問題があります。

後見人の業務は財産管理に限られたことではありません。

本人の意思を尊重し希望する生活を後押しするのが後見人制度本来の趣旨です。

これからますます後見人制度の普及利用促進を図り、高齢者や社会的弱者の皆さんの生活支援などを充実させていかなければならないと考えています。

参考 成年後見制度についてより詳しく述べたブログはこちらです。ぜひご覧になって下さい。

成年後見制度を巡る問題 1 高齢者の財産を不正流用する後見人が激増している!!
終わり

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