『老後2000万円問題』で話題の金融庁報告書 今読んでおいて損はない

『老後資金2000万円問題』で話題の金融庁報告書 今読んでおいて損はない

はじめに

金融庁が公表した資産形成に関するひとつの報告書が波紋を呼んでいます。 

金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ」というところが作成した「高齢社会における資産形成・管理」と題する報告書がそれで、日本で今、大きな社会問題になっています。 

 

この報告書にどんなことが書かれてあったのかというと、「65歳で定年退職により引退した高齢夫婦の世帯は、年金収入よりも支出が上回るため、平均で毎月約5.5万円の赤字になる。老後95歳まで30年間これが続くと、約2000万円が必要になる」と試算し、「赤字分は貯蓄などの金融資産から取り崩す必要がある」と指摘している部分があったのです。

この2000万円という数字が大きな反響を呼び、また批判を浴びて、連日のようにテレビ各局のニュースやワイドショーなどで取り上げられ話題になっています。

これが、もはや今年度の流行語大賞ノミネートが決定的とまでいわれている、 いわゆる『老後資金2000万円問題』です。

 

でも、この報告書をよく読みますと、確かに個々人の事情を一切考えず一般論で語っているところが無責任ではありますが、基本的には間違っていません。 

この2000万円に関する部分を除くと、私たちを取り巻く経済環境や社会構造の変化、現在の高齢社会において将来私たちがするべきことが端的に書かれています。

高齢期の資産管理が個人や社会全体にとって重要な課題であることを提起しており、その内容はわかりやすく、美しいグラフなどの図表とともに、付属文書も含めて概ね正しい方向性でまとめられていると評価して良いものなのです。 

老後資金づくりのマネー本一冊に充当できるくらいのよくできたコンテンツと言えるでしょう。一読に値するものです。
読んでおいて決して損はさせない出来栄えになっています。

後に本文の方でも書きますが、この報告書、実は政府与党のある幹部の発言により、公には存在しないことになっており、「消えた報告書」と呼ばれています。しかし当たり前のことですが、この報告書、消されてなんかはいません。都合の悪いものは消してしまいたいと思っているのは一部の政治家たちだけであって、実際にはちゃんと金融庁のホームページに公文書として存在しています。

ですから絶対に今のうちに読んでおかれた方がいいと思います。

この報告書は間違いなく金融庁の公式文書ですので消されることはないと思うのですが、いかんせん政治の世界ではどのようなことが起こるかわかりません。
万が一何かとんでもない圧力が働いて、本当に削除されてしまうという恐れもなきにしにあらずなので、絶対に今のうちに読んでおかれる事を、私は金融の専門職 (FP) として強くお勧め致します。

ちなみに立憲民主党の蓮舫参院幹事長はこの報告書を5分で読んだそうですが、私どものような凡人がこの報告書の文章と図表を理解しつつ全部読み終えるには最低でも30分以上はかかります。ご注意ください。(笑)  

報告書はこちらの金融庁のサイトにアクセスしてご覧いただくことができます。 [PDF版] ↓ 題名「高齢社会における資産形成・管理」

金融審議会 市場ワーキング・グループ 報告書 

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安倍政権が隠したい「不都合な真実」

麻生大臣の無礼&非礼が招いた事態

麻生太郎金融担当大臣が報告書のその部分について、6月7日「このモデルケースの高齢者夫婦世帯には約2,500万円の貯蓄があるのに、あたかも2000万円の赤字があるかのように表現したのは不適切だった」と、口をひん曲げてコメントをしましたが、その礼を欠いた姿勢などをめぐって批判が高まりました。 

さらに、6月10日の参議院決算委員会でも安倍晋三首相が半分逆ギレしながら釈明・反論したことで、野党各党から「公的年金への不安を煽っている。年金は100年安心という話は嘘だったのか」などと言いがかりをつけられ、SNS上でも大炎上が起きていました。

金融庁の報告書に対する批判として「2000万円を自助努力で準備しなさいというのか」「年金保険料を払わせるだけ払わせておいて、実際に歳をとってから年金もらえないなんて詐欺だ 年金返せ」といった的はずれな声が SNS などに溢れている状況でした。

麻生大臣の非礼はさらに続き、6月11日ついには報告書を「正式なものとしては受け取らない」とまで言い出しました。 政府の方針と異なるからという理由を挙げているようですが、政府の方針通りの内容でないと受け取らないというのでは、審議会など開く意味などないではありませんか。
もともと政府が専門家や有識者に検討を依頼している立場なのですから、本来ならばきちんと報告書を受け取ったうえで、反論があれば丁寧に意見を述べるのが、大臣の本来あるべき役割だったのではないでしょうか。

さらに翌6月12日、今度は自民党の森山国会対策委員長が「報告書はもうないわけですから。なくなっているわけですから」と発言してしまいました。
この発言にはびっくりです。報告書が消えてなくなるわけありません。
今なお金融庁のホームページ上に厳然として存在しています。

参院選を控えて、なりふり構わず幕引きを急ごうとする自民党の思惑が見て取れます。

与党政治家たちの発言を聞いて、年金制度のことを改めてよく調べてみると、こうした声のほとんどは的外れな指摘であることが分かります。

結局この人たちはこの問題の本質を分かっていらっしゃらないのでしょう。

 

そもそも「2000万円」という数字は一定の仮説に基づく一つの試算に過ぎず、老後に必要な額は各家庭によって様々であり、公的年金が今後も一定の役割を果たしていけるものであるということを丁寧に説明すれば、どうということはなかったはずです。

報告書が指摘している通り、平均寿命の延びや少子高齢化、世帯構成の変化などで、年金給付だけでは満足な水準の老後生活を送ることはもはや困難になってきているという厳しい現実が目の前にあり、政府も対応に迫られているのは確かなことなのです。

政府は誤解を与えたと弁解していますが、2000万円という数字が決して間違っているわけではありません。 金融庁のこの報告書は金融庁の本心から出た内容だと思われます。つまり老後に豊かな生活を送るためには、年金だけでは不十分だということなのです。 

しかし、そんなことは金融庁に言われるまでもなく、これまで散々指摘されてきたことであり、今回思わぬところから再びクローズアップされたことだけのことなのです。

年金制度が崩壊しつつあることを裏付ける「不都合な真実」に過ぎないのですが、参院選を前にそれが露呈したことに首相官邸も自民党も苛立ち、職務を果たしたはずの金融庁に責任転嫁しているのです。

今回の「老後資金2000万円問題」ですが、騒動のきっかけになったのは全国紙の新聞のある一つの記事だったようです。

その後ネットニュースでも取り上げられ、さらにそれに対するコメントによって炎上し、それに反応したテレビのワイドショーでもセンセーショナルに取り上げられて大きな社会的関心を呼ぶようになり、連日のようにテレビ各局が同じような「不安を煽るような内容」の放送を毎回しているわけです。
当然これらは視聴率狙いの意図的なものです。

売上げ増を狙う雑誌各社も同じです。読者が飛びつくような「年金問題」を大きな文字タイトルにして、こちらもセンセーショナルに書き立てています。

2000万円より注目すべきは報告書の本編の方だ

それでは、この記事を読んでいただいている読者の皆さまに質問させていただきます。 
今話題の金融庁の報告書、あなたはもうお読みになりましたか?

この報告書を読むためには金融庁のホームページWEBサイトにアクセスし、報告書の名前を検索して探し出さなくてはなりません。 

ですが、多分そんな面倒なことをしてまでこの報告書を読んでみようという方はそんなに多くはいらっしゃらないと思います。

おそらく多くの人は実際に発表された金融庁の報告書の中身までは詳しく読んでいらっしゃらないのではないかと思います。

この報告書には、本文で人口の高齢化とこれに伴って高齢者が保有する金融資産が大きくなっていることの事実問題への指摘がなされているだけではなく、附属文書で「高齢社会における資産の形成・管理の心構えと金融サービスのあり方」と題された、高齢期の資産管理について具体的な方針を指導する文書が付いています。

単なる金融審議会の報告書で、個人の立場に立ったアドバイスが行われているのも非常に珍しいことです。

つまりこの報告書は若い世代に老後のことを考えて資産運用するようにアドバイスするために書かれたものですから、非常に有用なこと事も書かれてあり、将来必要なお金のことについて一石を投じたものになっています。

ですからこの報告書は読んでおかないと絶対に損だと思います。

自信を持ってそう言い切れます。

それでは実際にどんなことが書いてあるか見てみましょう

金融庁報告書の目的 

「これまでより長く生きる以上、今までより多くのお金が必要となり、長く生きることに応じて資産寿命を延ばすことが必要になってくる」

「年金の水準は今後調整されていく」

2019年6月3日に公表された報告書では年金について次のように記述されています。

「公的年金制度が多くの人にとって老後の収入の柱であり続けることは間違いないが、少子高齢化により働く世代が中長期的に縮小していくことを踏まえて、年金制度の持続可能性を担保するためにマクロ経済スライドによる給付水準の調整が進められることとなっている。

こうした状況を踏まえ、今後は年金受給額を含めて自分自身の状況を “見える化” して、自らの望む生活水準に照らして必要となる資産や収入が足りないと思われるのであれば、就労継続の模索、支出の再点検・削減、そして保有する資産を活用した資産形成・運用といった “自助” の充実を行なっていく必要があるといえる」 (報告書P24に記載)

つまり、「公的年金の給付水準については今後調整されていくことが見込まれている」ということです。 調整というのは言い換えると引き下げるということです。これがマクロ経済スライドといわれるものです。

マクロ経済スライドは年金の上げ下げに際し消費者物価上昇率を用いるのではなく、その上昇率から1~2パーセント程度 (スライド調整率という) を差し引いた値を用いて調整するものです。

しかし先月5月22日の文案では 

年金の水準は中長期的に実質的な低下をしていきます

今後は公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」という直接的な表現でした。 この部分が削除されたのです。 

直接的な表現が削除・修正され、6月3日の報告書の正式な文言に変わったというわけです。 

では、なぜ修正されたのかというと、「年金は厚生労働省の問題なので我々金融庁が年金の厳しさを共通することは本意ではないから」というものでした。
(金融庁幹部の話)

年金100年安心プラン

100年安心とは年金額が変わらないという意味ではない

小泉政権下の2004年、政府は日本の年金制度について「年金100年安心プラン」と銘打った年金改革を断行し、マクロ経済スライドにより、一定の給付水準を確保することを前提に持続可能な制度に改めました。

マクロ経済スライドとは平均余命の伸びなどに合わせて年金の給付水準を自動的に調整するシステムのことです。

だから年金は安心だと胸を張るわけです。安倍総理も年金制度そのものは維持できるので「100年安心」だと言い張っているわけです。

つまり、年金の「100年安心」というのは、年金の制度が長く(100年間)続けられるという意味の安心であって、個人がもらえる年金額が変わらずに100年間続くから安心という意味ではありません。

決して国民一人ひとりの年金額は100年間は変わらない、100歳まで安心というわけではないということなのです。

この点を誤解している国民が随分多くいらっしゃるのではないかと思われます。

これは国民一人一人にちゃんとした情報開示をしていないということであり、説明責任を果たしていないということの証明ではないでしょうか。

しかもこのマクロ経済スライドという仕組みでは、賃金や物価が上がってもそれに応じて年金が上がることはなく、その実態はいわば「年金カットシステム」といえるものだったのです。

国民にとっては到底100年安心といえるものではありません。

厚生労働省は現役世代の所得に対する年金支給額の比率を毎年切り下げるシステムを作り上げ、それを着実に実行しているのです

(写真引用 : PIXTA)

何かと理由をつけて財政検証を公表したがらない政府自民党

政府は今年の年金財政検証の公表を夏の参院選後に先送りする方針を決めました。その理由は試算に時間がかかっているということに加え、結果が参院選に不利に働きかねないという思惑もあることからだといわれています。

財政検証とは年金財政の健全性を5年ごとにチェックするもので、いわば「公的年金の定期健康診断」に当たるものです。

今年がその5年に1度の財政検証の公表の年なのですが、従来通りでしたら6月の初めまでに公表されているはずなのに今年はなぜか未だに公表されていません。

今年の財政検証は「将来の年金額が少子化の影響で先細りする」という結果になるのではないかと予想されています。

このような検証結果では、選挙前に公表しても政権にとって良いことはないというのが、公表が遅れている理由だと思われます。

老後の生活はやっぱり年金だけでは足りないのだということが分かります。  

これが、単なる「老後資金2000万円不足問題」がいつのまにか「年金安心問題」に結びつけられ、大きな関心を呼び、社会問題になった理由なのです。

政府が年金の現状認識が厳しいということを国民にしっかりと見せる必要があります。 たとえ批判があっても、年金が減っていくと認識することが次世代にとっては必要なことだと考えます。

金融審議会 市場ワーキング・グループ 報告書 「高齢社会における資産形成・管理」 に書かれていること

そもそもこの報告書は何のために作られたのでしょうか?

金融庁の方針として、株式市場の活性化させるために個人資産を貯蓄から投資へ移行させたいという思惑があるからです。

金融庁が今回この報告書を出したのは、かつては70歳以降の人たちのライフステージの充実を前提に置いた政策を打ってこなかったため、老後の生活についてもしっかりとした政策を打たなければいけないという考え方によるものです。

元々この報告書は金融商品のつみたてNISA』iDeCo』をやりなさいというところに最終的に持っていくために、「年金だけでは足りないですよ」と不安を煽るような指摘をしているものです。 

この先、年金だけでは足りなくなる可能性があるので「自助」してくださいという国からのメッセージなのです。

資産形成支援の手法 「つみたてNISA」「iDeCo」

『つみたてNISA』(つみたてニーサ) とは「少額積立投資非課税制度」のことで、「貯蓄から投資へ」の流れを促すために作られた制度であり、家計からの投資を拡大させて経済成長につなげる狙いがあります。

年間40万円・最長20年間の積立投資についての運用益が非課税であり、商品は長期・積立・分散投資に適した公募株式投資信託商品などに限定されていますが、20歳以上の国内居住者であれば誰でも利用でき、その資産はいつでも引き出し可能です。

『iDeCo』(イデコ) とは「個人型確定拠出年金」のことです。

20歳以上60歳未満の国民であれば誰でも加入でき、60歳までに毎月一定の掛金を支払って投資信託や保険などの金融商品を買い、60歳になると年金としてそれを引き出せるというもので、この制度を使えば掛金は全額所得控除の対象となり、運用益についても非課税になり、積立金を受け取る時も一定の優遇税制が受けられます。

ただし、60歳になるまでは資産の中途引き出しは原則できないことになっています。 

つみたてNISA」や「iDeCo」もまだ1パーセント程度しか利用者はいないので、これを増やしたいと金融庁では考えているようです。

金融庁が言いたかったことは、「今まで貯金に偏っていた資産を資産運用で増やしたほうがいいですよ」ということを周知させたいということなのです。
ぜひとも投資してほしい。要するにタンス預金を吐き出させたい、という意図があることがわかります。

個々人にとっての資産の形成・管理での心構え 

人生のライフステージによる分類

現役期

長寿化に対応して長期・積立・分散投資など少額からでも資産形成の行動を起こす時期であり、次のようなことが有効と考えられる。

  • 早い時期から資産形成を行う重要性と有効性を認識すること
  • リスクを避けるため長期間分散して投資し続けること
  • 自分にふさわしいライフプランマネープランを検討すること

ただし投資による資産形成はあくまで過去の実績に基づくものであり、将来においても同様の結果になるとは限らず、想定外の損失が発生するリスクも存在することに注意が必要です。

リタイア期前後 

定年退職 (リタイア) 以降の人生も長期化していることに対応して、金融資産の目減りの抑制や計画的な資産の取り崩しに向けて行動する時期であり、次のようなことが有効であると考えられる。

  • 働く期間をできるだけ延ばし、収入を確保し続ける
  • 退職金がある場合、その使い方とライフプラン・マネープランを再検討する
  • 長い人生を見据えた中長期的な資産運用の継続とその後の資産の計画的な取り崩しを実行する

高齢期

資産の計画的な取り崩しを実行するとともに、認知・判断能力の低下や喪失に備えて行動する時期であり、次のようなことが有効であると考えられる。

  • 心身の衰えを見据えてマネープランを見直す(医療費、老人ホーム入居費など)
  • 取引関係の簡素化など心身の衰えに応じた対応をしやすくしておく
  • 他者のサポートによりこれまでと同様の金融サービスを利用しやすくしておく

(図表引用 : DIAMOND ONLINE)

その他報告書に書かれてあること

・高齢社会における資産の形成・管理での心構え

・金融リテラシーの向上

・高齢社会における金融サービスのあり方

・顧客本位の業務運営の徹底

・持続可能な金融サービス など

(図表引用 : 産経新聞)

最後に

今回の金融庁の報告書の問題では、金融庁幹部から「関係者への配慮が足りなかった」と謝罪表明がありましたが、確かに年金に言及する以上、参院選を控えて神経質になっている政界への配慮が必要だったともいえます。
そのために与野党の政争の具にされた感じは否めません。

でも長寿化と公的年金の役割縮小を展望し、老後貯蓄の必要性を説いている報告書の骨格自体は妥当なものです。
何度も言いますが、読んでおいて損はありません。

最も危惧されるのは金融庁が正当に評価されるべき部分までも反省することで、公的年金についての議論が深まることなく終わってしまうことです。

公的年金の現状と将来像を身近に捉えた上で、貯蓄と就労を組み合わせて老後に備えるといった議論へ進めていくことが最も重要なことだと思われます。

『老後資金2000万円問題』で話題の金融庁報告書 今読んでおいて損はない

終わり

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