パタハラ 票ハラ アウティング ! 新種のハラスメントが続々誕生しています

パタハラ 票ハラ アウティング ! 新種のハラスメントが続々誕生しています

はじめに

企業に職場でのパワハラ防止策を義務づける、ハラスメント防止関連法が2019年
5月29日、国会の参議院本会議で可決・成立しました。 

職場でのいじめや嫌がらせといったパワハラをなくし、誰もが安心して働ける環境づくりがやっと整ったわけです。

今回成立したハラスメント防止関連法というのは、正式には改正された「労働施策総合推進法」や「女性活躍推進法」などの五つの法律なのですが、今回の法改正の最大の特徴は、職場におけるパワハラについて「優越的な関係を背景にした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、労働者の就業環境が害されること (身体的もしくは精神的な苦痛を与えること) 」と、はっきり定義したことです。

これまで企業の自主的な取り組みに委ねていたパワハラ対策を法制化した意義は大きいのですが、しかしその環境づくりはまだまだ基礎の段階で、始まったばかりといえるでしょう。

実際、パワハラと業務上の指導との線引きが難しいということはよく聞く話です。

確かに管理職と部下との間で言い分が食い違うことは少なくありません。
状況や言い分などでパワハラかどうかの評価が分かれる可能性もあります。
トラブルを避けようと部下への注意をためらう管理職が増えると、人材育成にも
支障が出るとの懸念を示した企業も多いのです。

そこで厚労省は、どんな行為がパワハラに当たるのかについて、今後新たに
『指針』を作成して、職場の誰もが理解しやすいような具体例を示す予定になっています。

ところで、ハラスメントはパワハラやセクハラばかりではありません。

最近では『えっ?こんなこともハラスメントになるの?』と思われるような、新しい形態のハラスメントが次々と発生していることをご存知でしょうか?

今回のブログではそのことについて追求していきたいと思います。

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目次

新種のハラスメント続々発生中 !!

こんなハラスメントにもご注意を!

1. カスタマーハラスメント

従業員や店員に対して、取引先顧客が執拗なクレームを付け、無理難題を突きつけることがあります。
これが今大きな社会問題になっている、カスタマーハラスメント (カスハラ) といわれるものです。 

カスタマーハラスメントについては私もこのブログの別の記事でその問題性を指摘しております。 ↓

 ”カスタマーハラスメント” 問題 暴言&悪質クレームの酷い実態を見よ!!

悪質クレーマーの撃退方法とカスハラ対策のための指針作りが決定したこと

企業と企業の間では優越的地位を乱用した取引を「独占禁止法」で禁じていますが、今回成立したパワハラ防止法では、個人間であっても発注元の担当者が優位な立場を利用して弱い立場の取引相手に傲慢な態度で接するなどの行為はカスタマーハラスメントであると認定し、配慮を求めています。
今後、中小企業庁や消費者庁などと連携して具体的な対応策を検討することになっています。


具体的にどのようなことがカスタマーハラスメントとして認定されるのか、詳しいことは今後公表される『指針』の中で明らかにされてくるでしょう。

「男のくせに育休取るのか?」は NG!

2. パタニティー・ハラスメント (パタハラ)

 

 厚生労働省の調査によると、男性の育児休業取得率は平成30年 (2018年) の時点でわずか 6.16%に過ぎません。しかし、これでも前年度から1%以上上昇し、過去最高となったそうなのです。

女性の取得率 82.2%とは格段の差があります。 

一方、男性新入社員を対象とした調査では、約7割が育児休業取得を希望しているというデータがあります。(2018年 日本生産性本部の調査)
つまり、実際の取得率とはかなりのギャップがあるわけです。 

こうした中で最近耳にすることが多くなったのが、「パタニティー・ハラスメント (パタハラ) 」という言葉です。 

「パタニティー」[Paternity] とは英語で「父性」を意味し、一般的にパタハラとは、
育児休業を取ろうとする男性社員への嫌がらせのこと
を意味します。

男性の育児休業の取得を巡っては、今年の6月、大手の某化学メーカーが、育児休業を取った男性社員に対し育休明け直後に不当な転勤を命じたとして、 SNS 上で
『この配置転換は育児をする男性に対しての嫌がらせではないか』と話題になりました。 

一般に、男性が育児休業を取るという、法令で定められた当然の権利を行使したとき、この「父性」を発揮する権利や機会を職場の上司や同僚などが妨害または侵害することは決して許されるものではなく、このことがをきっかけとなって
「パタニティー・ハラスメント」という言葉が世の中に浸透していきました。

日本では古来から「男は外で働き、女は家庭を守る」といった、「性別役割分業意識」が高く、未だに男性が育児休業を取得すること (いわゆる ”イクメン” になること) に否定的な見方をする職場も多いようです。

それが高じて、無意識のうちにパタニティー・ハラスメントを引き起こしてしまうわけです。 なんとも頭の固い人たちが多いことでしょうか。 

現在では「男女雇用機会均等法」及び「育児・介護休業法」によって、事業主や上司、同僚からの妊娠・出産、育児、介護などを理由とする、女性へのハラスメント、いわゆるマタニティ・ハラスメント (マタハラ) は禁止されています。 

本来であればこの二つの法律は男性、女性ともに当てはまるものでなければならないはずですが、なぜか男性が育児休業を取ろうとすると、それが理解されず、パタハラが起こってしまうわけです。 

例えば、男性社員が育児休業の取得を上司に申請したところ、「休みを取るなら会社辞めてもらうしかないよ」とか「男のくせに育休取るなんてどういうつもりだ?」などと威圧的な言動を受けたため、育休を取得することを諦めざるを得ない状況に追い込まれたときなどは典型的なパタニティー・ハラスメント行為があったということになります。

また、先ほど指摘した「性別役割分業意識」だけではなく、育児のために休むことへの罪悪感が、男性の育児休業取得を阻んでいる原因のひとつとも考えられます。

今では、職場が男性社員の育児参加に消極的な姿勢を見せることは、企業としてのブランドイメージを損ねる事態につながりかねません。

企業側としてはよく考えて対応することが望まれます。

それでも間違いなく言えることは、重要なのはやはり日々のコミュニケーションであるということです。

育児休業などを取らざるを得なくなった時の状況を本人がうまく職場の上司などに伝えられるようにするため、常日頃から職場での円滑なコミュニケーションが取れる環境にしておくことがやはり一番大切なことではないでしょうか。

パタニティー・ハラスメントに限らず、あらゆるハラスメントを許さない職場とするためには、経営トップが明確なメッセージを打ち出し、管理職の理解を促すことが今後より一層求められることとなってくるでしょう。 

女性の政治参画を邪魔するもの

3. 選挙ハラスメント (票ハラスメント) はなぜ起こる?

今年 (2019年) は、春に各都道府県の知事や市町村長などを決める統一地方選挙、そしてこの夏には、参議院議員総選挙がありました。

 

その他にも全国各地で市町村議会、区議会などの地方議会選挙が年中ひんぱんに行われています。

そうなると当然、女性の立候補者も増えてくるわけですが、最近、一部の有権者が選挙運動中の女性の議員や女性候補者を個人的に誘ったり、抱きついたりするなどのセクハラ行為を行う「選挙ハラスメント」、別名「票ハラスメント」が急激に増えているという実態が明らかになりました。
『お前に投票してやるよ。その代わり・・・』というアレです。 

政治に挑戦しようとする女性が増える中、このような問題が表面化しているのです。
もう想像がついているかと思いますが、これらの不埒な行動をする一部の有権者というのは、ほぼ例外なく中高年の一般男性有権者です。

ある地方市議会議員の女性は四年前の統一地方選で初めて立候補し、街頭演説をしていた時の場面を今でもはっきりと覚えているそうです。

「お前に投票してやるよ」。そう言いながら一人の中年男性有権者が性的なしぐさを見せてきたのです。この時女性はショックで体が硬直してしまいましたが、相手は有権者なので強く「止めてください」とも言えず、こわばった表情で微笑み返すしかなかったそうです。

そのうちこの男性有権者の行動は次第にエスカレートし、「会って相談に乗って欲しい」と、個人的な付き合いを求めるようになり、さらに有権者たちとの会合の場でいきなり抱きつかれたこともあったそうです。 

女性は「相手が有権者なので強く出られなかった」「どこからNOと言っていいのかわからなかった」と、当時はかなり深刻に思い悩んでいたと告白しています。

 

この女性候補者は思い余って先輩の女性議員に相談しましたが、その時「どんな嫌な有権者でも上手くあしらえてこそ、一人前の議員になれるのよ」と言われたそうです。
また、所属政党のイベントに参加した時にこの問題を訴えたところ、ある先輩男性議員から「セクハラセクハラと騒ぐから誰も話しかけなくなるんだよ」と冷たく言い放たれたそうです。

その後当選して市議会議員となったこの女性は、このような有権者の許されない行為に対し「決して受け流すのではなく、ダメなものはダメとはっきりと言える社会にしたい」と力を込め抱負を述べています。

女性の政治参画が当たり前となったこの時代において、女性でもこのようにはっきりと物が言えることは極めて大切なことだと思われます。 

 

今年4月の統一地方選挙では、一般市長選や市議選でも過去最多の女性が当選し、「女性躍進」と報じられました。

しかし、選挙運動の現場ではやはり多くの「選挙ハラスメント (票ハラ)」 があったのです。

例えば初当選したある20代の女性区議が街頭演説をしていると、「女は政治なんかやるんじゃない」「早く結婚して子供を産め」などと、聴衆の男性から昔からよくある定番の女性蔑視の言葉を何度も投げつけられたそうです。

この候補者が若く、魅力的だったせいもあったのかもしれませんが、別の男性有権者からは体を触られたり強引に腕を引っ張られて「飲みに行こう」と連れ去られそうになったこともあったそうです。
これでは迷惑行為どころではなく、対応をひとつ間違えるとストーカー犯罪にもなりかねないところでした。 

身体接触だけでなく、面前で罵倒されるなど尊厳を傷つけられる行為もよくあることのようです。 

選挙とハラスメント

このように女性候補者に近づき、つきまとったり、体に触ったりする。
そのような行為が「選挙ハラスメント」あるいは「票ハラスメント」などと呼ばれて問題となっているのです。 


一票でも票が欲しい候補者の弱みにつけこんだ、悪質な嫌がらせだといえるでしょう。 「票ハラ」は女性候補者の方が被害に遭いやすく、組織の後ろ盾や周りの支援が十分でないと、身の危険を感じることすらあるのです。

日本では票を握る有権者の立場が強く、候補者に対して優位関係にあります。

特に経験が浅く、選挙地盤の弱い新人女性候補は標的にされやすいのです。

候補者個人が前面に立って握手して回る、日本古来のいわゆる、ドブ板選挙スタイルはハラスメントの温床になりやすい一面があるのです。

仮に被害に遭ったとしても、男性中心の政治の世界では『我慢しろ』と言われ、とりあってもらえないこともあります。

このような悪しき習慣は早く何とかしなければならない。でも有効な手段がなくできない、というジレンマに陥っているのではないでしょうか。
もはや有権者の自覚を促すしか方法はないのかもしれません。

内閣府が2017年度に全国の女性地方議員を対象に行なったアンケート調査では、1651人から回答があったうち、約3割500人が「女性として差別されたりハラスメントを受けたりすることがある」と回答しています。
そのうちのおよそ4割は 20 ~ 40代の比較的若い世代の議員さんたちでした。

また、驚くべきことに「当選してからも依然としてハラスメントを受けることがある」と答えた女性議員も多かったのです。 

そして「政治は男性のものという社会の意識を変えていかないと、女性議員は増えていかない」と考えている女性議員がほとんどでした。

日本の旧態依然とした政治文化を変えていくためにも女性の力は欠かせませんね。

ちなみに「選挙ハラスメント」の中には、ウグイス嬢などへのセクハラ・パワハラなども含まれるのです。
選挙活動を手伝う女性たちが、男性候補者や支持者たちから体を触られたり、暴言を吐かれたりしたという事例も多くありました。 

1日も早い「選挙ハラスメント」「票ハラスメント」の根絶を願わずにはいられません。

LGBTの「 同意なき暴露」を防げ

4. アウティング

性的少数者 (セクシャル・マイノリティー) のいわゆる同性愛者や性同一性障害者「ゲイ、レズビアン、バイセクシャル、トランスジェンダー」=「 L.G.B.T.」であることを、第三者が本人の同意を得ずに暴露することを「アウティング (outing)」 と言います。

言い換えると、「アウティングとは、人のセクシャリティの秘密を勝手に第三者に言いふらすこと」という意味でよく使われます。 


今回成立したパワハラ防止法では、このように性的指向 (恋愛や性的欲望の対象)性自認 (自分の性別に関する意識) を本人の了解なく明らかにする行為「アウティング」についても、業務上必要のないハラスメント行為として禁止するように
『指針』に盛り込む予定になっています。

一橋大学アウティング事件


アウティング」という言葉を一躍有名にしたのが、「一橋大学アウティング事件」です。

2015年6月、一橋大学の法科大学院で、同性愛者の学生 A さんは同級生の B さんに「自分はゲイである」とカミングアウトしたところ、告白された B さんが「A さんがゲイであることをもう隠しておけない」と LINE グループで発言し、アウティングされた A さんが精神的にショックを受け、心身に変調をきたして大学の校舎から投身自殺をしてしまったという事件です。

秘密を暴露された当事者にとって「アウティング」がどれほど辛いものであるか、第三者であるわたしたちには計り知ることはできません。

そもそも LGBT に関係なく、自分の秘密を勝手に誰かが言いふらしていたらいい気分ではありませんし、信頼していた人にそんなことをされたら裏切られた気分になり、傷つくことは容易に想像できます。

この事件では尊い命が失われたと同時に、「アウティング」が広く世に知られるきっかけにもなりました。

また、アウティングされた後、 A さんはアウティングをハラスメントだと考え、大学にあるハラスメント相談室に相談したところ、担当の相談員が、「もとよりアウティングがハラスメントであるという認識を持っていなかった」ために、適切な対応をとらなかったということが分かっています。
A さんの両親は翌年、同級生B さんと大学に損害賠償を求めて提訴しましたが、 結局請求は棄却されてしまいました。 

この事件をきっかけに、アウティングによって傷つく人が増えないよう、一橋大学の所在地でもある東京都国立市では「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」によってアウティングが禁止されました。

また、茨城県つくば市の筑波大学でも LGBT に関するガイドラインを改訂し、アウティングはハラスメントに該当すると定め、故意や悪意に基づく公表はハラスメントとして対処するとの方針を示しました。

☆アウティングに関する最新ニュース

2019年8月30日、大阪府吹田市の病院に勤務する「トランスジェンダー = 性同一性障害」の看護助手の女性が、性別を男性から女性に変えていたことを、同意していないのに職場の上司 (看護部長) から無断で同僚らに公表 (暴露) され、精神的苦痛を受けたとして、慰謝料などの損害賠償を求めて勤務する医療法人を提訴しました。
女性側は上司の行為について、『性自認を第三者が勝手に暴露する「アウティング」に当たり、病院側は従業員への適切な指導・教育を怠った』と主張しています。

もしカミングアウトされたらどうしたらいいの?

現在の日本社会においては「カミングアウト」という言葉は、他人に明かしていない秘密を口外するといったニュアンスで普通に使われています。
しかし「カミングアウト」とは本来、 LGBT の人などが自分の性的指向や性自認について誰かに伝えることを指す言葉なのです。

 LGBT の人たちがなぜ「カミングアウト」をするのかというと、「カミングアウトをしない限り、正常な異性愛者として扱われてしまうから」なのです。
LGBT の人たちにとっては、それは死ぬほど辛いことなのかもしれません。

それではもし私たちが「カミングアウト」をされた時、 LGBT ではない普通の人間であるわたしたちはどうすればいいのでしょうか?

実際、カミングアウトされた時にうまく対応できず、偶発的に「アウティング」が起こってしまう可能性だって捨てきれません。

「カミングアウト」を受けた時は『二人だけの秘密にしておいた方がいいか』
『真実を伝えてもいいのは誰か』
などの取り決めを必ずしておかれたほうが良いでしょう。
誰もが「カミングアウト」を受け止める心構えはしておかれた方が良いのかも知れません。 

 最後に一言

今回のブログでは「パタニティー・ハラスメント」、
「選挙ハラスメント (票ハラスメント) 」「アウティング」という三つの新しいタイプのハラスメントを紹介しました。

パワハラ防止法は成立しましたが、常にまた何か新しいタイプのハラスメントが日々生まれてくるのかも知れません。 

パタハラ 票ハラ アウティング ! 新種のハラスメントが続々誕生しています

終わり

 

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