認知症高齢者700万人 保有金融資産200兆円時代の認知症マネー凍結リスクに備える

認知症高齢者700万人 保有金融資産200兆円時代の認知症マネー
凍結リスクに備える

はじめに

日本は既に超高齢社会に突入しています。

そして認知症の高齢者も2025年には700万人を超える見通しで、実に65歳以上の

高齢者の5人に1人が認知症になるという計算になります。

これだけ認知症患者が増えるということは、おのずと認知症患者が保有する金融資

も増え続けているということです。

最新のニュース報道によると、2018年3月現在では認知症患者が保有する金融資産

143兆円にも上ることが確認されています。

この金融資産が2030年にはなんと今の1.5倍の215兆円に達し、日本の全ての家計

の金融資産の1割を突破しそうだという試算がなされています。

 

 ※これらの数字は民間シンクタンク : 第一生命経済研究所が「認知症有症率」の
  データなどを用いて保有額を算出した推計予測によるものです。

国内総生産(GNP) の4割にも相当する、200兆円を超える巨大マネーが、所有者が

認知症になってしまったために資産として生かすことができず、銀行口座を凍結

されて塩漬け状態にされてしまうのです。 本当にもったいない話です。

ちゃんとした対策を取らないとずっと凍結されたままになるおそれがあります。

また、金融庁が2018年7月にまとめた「高齢社会における金融サービスのあり方」

によると、2035年には認知症患者が有価証券全体の15%を持つ可能性があると予

されています。

これではお金が社会に出回ることができなくなり、日本経済の重荷になりかねませ

ん。  ですから政府や金融機関はこうした資産が使われなくなることに危機感を

ているのです。

同じように私たち金融資産を持つ者も危機感を持たなくてはならないと思います。

認知症になり本人の意思確認ができない状況になると、金融機関は認知症患者の

銀行口座を凍結してしまいます。

ですからいくら認知症の治療に必要だからと、家族から払い戻し請求をしたとして

、支払いに応じてもらうことが簡単にはできなくなってしまうのです。

金融機関の立場では、口座凍結というのは家族による財産の横領を防ぐための当然

の対応なのですが、いくら家族が本人のためだと主張したとしても、認知症により

本人の意思表示確認ができない以上本人の預金が凍結状態になということは

や避けられない必然のこととなります。

お金を下ろすハードルが上がり、認知症患者本人も家族も、大変困ったことになる

わけです。

いずれにしてもこのままの状態が続けば、凍結され塩漬け状態になる資産が膨大に

膨れ上がる事態になることは避けられないことになります。

今回はこのような「認知症とお金の大問題」がテーマです。

つまり認知症患者の銀行口座凍結いう事態になってしまった場合、どのように対

処したらいいのか、またそのような事態にならないようにするにはどのような方法

があるのか、認知機能の衰えた時のお金「認知症マネー」への対処方法をもう一度

深く追求してみたいと思います。

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目次

認知症になると財産は凍結 認知症700万人時代の認知症マネーの行方

親や配偶者が亡くなり、本人名義の預金が凍結されたという経験を持つ方もいら

っしゃると思います。

でも預金が凍結されるリスクは死後だけではありません。

たとえ存命中であっても認知症で本人の意思を示せない状態だと口座が凍結され、

原則的に預金をおろすことはできなくなります。


本人が認知症になった場合、本人のキャッシュカードを使って家族が代理で生活費

などを下ろすことはよくありますが、それが100万円単位のまとまったお金を下ろ

す場合などには、金融機関ではより慎重な本人確認をします。

特殊詐欺=振り込め詐欺などの金融犯罪が増え、本人確認は以前より厳しくなって

きています。

意思確認が不十分なまま取引に応じると、金融機関が家族の争いなどに巻き込まれ

てしまうことがあるからです。

自らの意思を示せない認知症高齢者のお金は、口座にあっても使えない塩漬け状態

いわばお金も寝たきり状態になってしまうのです。

これではまとまったお金が必要な時に家族は大変困ってしまいます。

はっきり申し上げておきます。 自分や家族が認知症になってしまってから、あわ

てて金融資産の管理を何とかしようとしても遅いのです。

銀行口座を凍結されたくなければ、もっと早くから対策を立てておかなければなり

ません。  これからその方法をいくつか申し上げます。

成年後見制度を利用する 法定後見人の選任


このようにすでに認知症が発症して銀行口座が凍結され、お金を引き出せない状態

になってしまった場合にはもはや考えられる手段はひとつしかありません。

それは成年後見制度を利用することです。

金融機関の窓口でも「認知症は本人の意思を確認できないので、成年後見制度を使

ってください」と必ず言われます。

成年後見制度は、第三者が認知症などによって判断能力が不十分になった人の後見

人になって財産を保護する制度で、財産管理や施設の入退所の契約 (身上監護) など

をすることができます。

成年後見制度は、認知症などですでに判断能力が低下してしまった後に、本人や

偶者、家族などが家庭裁判所に申し立て、裁判所に認められると、裁判所の選ん

後見人がすぐに後見を開始することになります。


家族や親族が後見人に選ばれることは現在では極めて少なくなっています。

家庭裁判所から選ばれる後見人は今では7割以上が弁護士や司法書士などの法律専門

あるいは社会福祉士などで、法定後見人と呼ばれます。

法定後見人成年後見制度の種類のひとつです。

法定後見人認知症の人の財産を管理し、財産処分などの契約を代理して、本人に

不利益な行為の取り消しができる強い権限を持ちます。

法定後見の大問題


ただ、この法律専門職による法定後見人制度は手続きが非常に煩雑で、費用もかさ

みます。 管理財産が1,000万円未満だと毎月の基本報酬額が月額2万円程度かか

り、5,000万円を超えると月額5万ないし6万円、 また書類の準備などの初期費用に

30万円ほどかかるといわれています。

民間の調査期間の調べによると、認知症になったら成年後見制度を利用せざるを得

ないことを知ってはいても、実際に成年後見制度を利用しているのはわずかに5%

どで、「制度を知っているが使うつもりはない」と考えている人たちが 約55%

も上り、制度を使わずに家族で何とかしようとしている実態が浮かび上がってい

す。

実際、最高裁が公表したところによると2017年末時点の成年後見制度の利用者は

21万人で、一方では認知症の患者数は約500万人にものぼると推計されています。

政府も成年後見制度の利用者数が、認知症高齢者の数と比較して著しく少ないと認

ています。


家族が法定後見人になればほとんど報酬・費用というものは発生しないのに、法律

専門職を法定後見人にするとこれだけの報酬・初期費用がかかるのですから、成年

後見制度を利用するつもりはないと考えるのは当然のことといえるでしょう。

また、法定後見人と家族との間で、認知症の親の今後の介護の方法などで考え方の

ズレが生じることがよくあります。

法律専門職が合理的に考えることと、家族が肉親として考えることとでは多少なり

とも差があることがよくあります。

法律専門家は職務上、成年後見制度を「本人の財産を守るための制度」と考え、制

度を遵守しようと考えているだけなのですが、 家族の考え方との温度差がどうして

も出てきてしまうようです。

何といっても認知症の人やその家族が知らない人や望まない人が法定後見人に選ば

れてしまうことが最大の問題点なのです。

この成年後見制度が2000年に導入された当初、選ばれた後見人の約9割が家族・親

族でした。 しかし管理する財産を自分たちのものと混同しやすく、使い込みなど

が頻発してしまいました。

それで今は後見人の7割超が弁護士・司法書士などの法律専門職になったのですが、

今度はその法律専門職による財産の横領や不正流用などが後を絶たないという事態

が増え、 認知症患者は身内からも第三者からも財産を奪われるというリスクにさら

されているわけです。

銀行口座凍結を防ぐ最良の方法 認知症になる前に対策をしておくことしかない

ここまでお読みいただいて分かりのように、すでに認知症になってしまった後では

成年後見制度を利用するしか方法はありません。

しかし、この裁判所が後見人を決める「法定後見制度」は強力な対策にはなります

が、使い勝手が悪く課題も多いことがおわかりになられたと思います。


認知症になってから考えるのではなく、認知症になる前に何らかの対策を考えてお

きましょう。

何度も申し上げますが、認知症になってから対策を考えてもすでに遅いのです。 

日本の多くの国民の皆様はこの認知症マネーのリスクをまだ深く考えていらっしゃ

らないようです。

最近、一部の金融機関では成年後見制度を利用しなくとも認知症になった場合に備

える新しいサービスを考えているようです。

例えば、医療や介護などに必要なお金を預けておく専用の口座をあらかじめ作って

おき、万が一本人が認知症になって自分で預金の引き出しができなくなった場合で

も、後見人の人に医療や介護あるいは食料や日用品の買い物などに必要な金額が支

払われることになっています。

しかしなんといっても一番考えていただきたいのは、金融機関を利用する人つまり

銀行口座を持っている人=顧客自身の意識の改革です。


認知症など「自分はまだ大丈夫、考えたことはない」という考えをお持ちの方がま

だ大変多くいらっしゃるのです。 認知症には絶対にならないと考えていても、ど

んな予防対策を取っていたとしても、なる時にはなってしまうのです。

認知症になる原因は未だに全てが解明されているわけではありませんので、いくら

本人が絶対に認知症にはならないと考えていたとしても、結局はどうなるかわから

ないのです。

多くの人は認知症になった自分を想像できないのです。 

そんな現実が認知症とお金の問題をより難しくしているわけです。

むしろ認知症の症状は必ず自分にも現れるものだと考えておいた方がよろしいかと

思います。 

いつ認知症の症状が現れても大丈夫なように、そうなる前に対策を立てておくこと

が大切なことなのです。

大事な自分の財産を守ることの大切さをよく考え、大切な家族の心配にも十分に耳

を傾け、対策を講じておくことです。

認知症になるの最良の対策 任意後見制度

成年後見制度には「法定後見」だけではなく、もう一つ「任意後見」という種類が

あります。

まだ認知症になる前でしたら是非ともこの「任意後見制度」を利用することを

検討してみてください。 

「任意後見制度」認知症になる前にもしも将来認知症になった場合に備えて、

本人の意思であらかじめ選んだおいた任意後見人に財産管理を任せる制度です。

本人にまだ判断能力があるうちに後見人を選任しておくのです。 

任意後見人になるには特別な資格は必要なく、子供や配偶者などの家族や知人を

後見人にすることもできます。 

これまでは任意後見人になるのはやはり家族が多かったのですが、近年では一人暮

らしの単身世帯の増加などにより、法律や福祉の専門職などが後見人になる場合が

多くなってきています。

つまり本人が信頼できる人に任意後見人になってもらうのです。

任意後見制度を利用するには、まず必要書類を用意し、本人と後見人になる人が一

緒に最寄りの公証役場に出向いて「任意後見契約」を結び、それを公正証書にして

おくのです。

その後、いざ本人が認知症になった場合には、任意後見受任者や家族などが家庭裁

判所に申し立てをして、裁判所に「任意後見監督人」を選んでもらうことになりま

す。 この申し立てを行って初めて、任意後見がスタートするのです。

「任意後見監督人」とは、後見人が何らかの不正をしていないかどうかを監督する

立場の人の事で、弁護士などの法律家が選任されることになります。

任意後見のメリット


任意後見制度は自分の意思で後見人候補者を選ぶことができる他、法定後見とは異

なり、必ず「任意後見監督人」が付くので、後見人による金融財産の使い込みなど

のトラブルを防ぐことができます。 

法定後見だと本人が知らない人や望まない人が後見人に選ばれることがあっても、

それを拒絶することはできませんが、任意後見では全く知らない人が後見人になる

ことはないので、気心の通じた人が後見人になるほうが安心できますし、後見人に

指名された方もやりがいにつながると思われます。

民事信託制度もあります

任意後見人制度の他にも、認知症による金融資産の凍結を防ぐ方法がもう一つあり

ます。

親が元気で判断力もしっかりしているうちに資産管理を子供たちなどに任せる方法

で、「民事信託」といわれる制度です。

「民事信託」とは認知症などで財産管理の判断能力がなくなった場合に備えて、あ

らかじめ財産の管理を親族などに委託できる信託契約のことです。

身内で契約できるので「家族信託」とも呼ばれています。

親の財産を信託された子は、親の代わりに財産を運用したり使ったりすることがで

きます。  認知症で意思能力が低下しても、財産を信託しておけば相続対策にも

有効な方法となります。

民事信託に関しましてはこのブログサイトの別の記事で何回かご説明しておりますので、詳しくはそちらの方をご覧になってみてください。

※記事タイトル名をクリックしていただくとご覧になれます ↓

高齢者財産管理の新手法「信託制度」その1 ゛後見制度支援信託゛について

高齢者財産管理の新手法「信託制度」その2 「民事信託 ( 家族信託 )」を使ってみましょう

信託の活用法「民事信託」を使って障害を持つ子どもに生活費を残してあげましょう

最後に まとめ


認知症患者が急増する超高齢社会。

認知症患者の凍結された金融資産が200兆円にも なることが予測されているわけで

すから、金融資産を持つ全ての人たちは今のうちに対策を考えておかれたほうがい

いでしょう。

文中でも述べましたが、多くの人は認知症になった自分を想像できていません。 

そんな現実が認知症とお金の問題をより難しくしています。

認知症によるマネー凍結リスクを少しでも減らすようにしましょう。

多い少ないにかかわらず金融資産をお持ちのみなさん、今から考えておいてくださ

い。 対策を立てておいてください。 ぜひお願い致します。

認知症高齢者700万人 保有金融資産200兆円時代のマネー凍結リスクに備える
終わり

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